inada_haruaki’s blog

愛媛出身21歳大学生が綴る挑戦とつぶやきのブログ。

『舞姫』の授業とはてなブログ

 高校2年の時、国語(現代文)の授業で森鴎外の『舞姫』を扱った。授業を受けただけでない。授業をしたのである。

 私が卒業した高校では毎年2年生になると舞姫の文章理解の授業を生徒にさせるという文化があった。クラスをいくつかの班に分け、各班に『舞姫』の一部を担当させるのである。最初の数回はいつものように先生の授業があり、それ以降はラストまですべてクラスメイトの授業である。

 普段から聞いている授業だが、いざ自分たちで授業の内容を考え準備をしようとなると大きな壁があった。自分たちが完璧に文章を理解しておかないと説明ができないのみならず、授業を聞く他の班の人たちに考えてもらう内容まで考えねばならないのである。これは大変なことになったぞと悟った。

 大変なのはそれだけでなかった。割り当てられたのがラストから二番目の部分、つまりクライマックスに向かう伏線回収の部分だったのだ。まず担当部分の前までを読み、理解したうえで担当部分につながる部分を探し出し、さらにはラストに向かう流れを考えた内容を作り出さねばならない。たった1つの物語に、たった50分の授業のために、こんなに頭を使いこんなに案を出して準備をせねばならんのか。先生たちはこんな仕事をしとるのか。小説家はこんなものを書いたのか。いろいろな雑念が浮かんでは消え浮かんでは消えていった。

 そんなこんなで文章理解を進めたあと最初に出した授業計画はこれまた大変なものだった。どんなに急いでも2時間はかかる。内容が濃すぎる部分だから仕方ないのだが、ひとつひとつの文から、そしてひとつひとつの言葉遣いや些細な表現から主人公や作者の感情がにじみ出ているように見えた。現代文のS先生は「これは無理でしょー。言いたいことは痛いほどわかるんだけどねー。もっと授業時間ほしいでしょー?でも大事だと思う部分だけにして50分に収めてねー。」(記憶が曖昧なので本当にこう言われたわけではないと思います)そんな無茶な。削れるところなんかあるかい。そう思いつつも班員と協力して削って削って55分くらいで終わるだろうという量まではいった。あとは気合だ。いつもならある漢字や語句の確認を飛ばそう。誰かに発表してもらう問いもこちらで言ってしまおう。それで50分になるだろう。そう思っていた。

 最終的な授業計画と生徒に配るワークシートを作るため、もう一度通して読んでみた。おかしい。違和感がある。回収されていない伏線がある。でもそれを拾うと担当範囲を越える範囲で解釈がすべて変わる。まずい。どうすべきだろう。とりあえず相談してみよう。相談にいくとS先生は「そーなのよー。そういう読み方もできちゃうんだよねー。でもそれ語ると1時間超えるでしょー?一応授業の流れがあるから、ほかの班が気付かなかったところは置いておいて、授業の最後に言えばいいんじゃなーい?」(本当に記憶が曖昧なのでニュアンスなどが真実と違うと思います)確かにその方法があった。とも思ったが、そんな時間無いわ!ということでその解釈は胸に秘めることとして、授業の準備を進めた。

 授業当日はどうなったかはお察しの通り。数週間かけてやっと理解できてきたものをクラスメイトにうまく伝えることなんざできるわけねーだろーが。だからこそのこの授業なんだけどね。

 でも『舞姫』は何度も読んだから内容の奥深さには触れられたし、おそらくほかの人が気づかない部分にも気づけたし。満足はしています。ただ、燃え尽きてそれ以降読んでないし、なんなら伏線とか忘れたし。

 一番楽しかったのは先生と伏線について話してたときかな。深い知識と多くの経験がある人と意見交換できたのは本当に楽しかった。

 

 高校卒業して数年経ってからそのS先生がはてなブログをやっていることを見つけて、俺もやってみようと思ってこのブログの開設に至ったのです。


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